旅は楽しく疲れるもの

2021年の年末
新型コロナウィルスの感染拡大がすわ第六波か、と
いわれてはいたけれど、
できるだけ人が少ないところを選んで、
感染症対策を万全に、家族で旅をした。

野鳥撮影に夢中になった一年。
(前回のコラム参照↓)

鳥はピーチク鳴かない

集大成として

「北でしか見られない野鳥をこの目で見たい!」

と言いつづける娘と一緒に
野鳥探しの旅にでることにしたのだ。

ただ、敏感で繊細な娘は、普段から不安や心配が高くなりがちだ。
新型コロナ関連の報道に不安が高まっている。
(テレビなどの刺激的な見出しが心に残り、
正しく怖がるというより、
もはや恐怖で具合が悪くなってしまう)
旅を楽しめるかは微妙なところだった。

そうでなくても、旅は娘にとっていつもチャレンジングな行事だ。

家族と一緒なら新しいものが好き、新しい場所が好きなので、旅行に行くのは本人も大好きなのだが、
そうした楽しい刺激もHSCの彼女にとっては、負担になることは多い。

楽しさと疲れがつねに天秤にかかっている状態。
これは誰にとってもそうだろうけど、
人ごみや騒音がある場所では疲れが急激に増えるし、
外食も好きなのだけど、続くと胃腸に負担が出る。

実際、これまで私は娘を旅のお供にして何度か失敗している。
本人が楽しそうだからと安心していたら、小さなストレスをためていたり、私がうっかり自分のペースで楽しんでいると帰宅後非常に具合が悪くなったこともある(ほんと、ごめん…)。

私に気を使って辛さを言えないこともあるし、
自分でもしんどさに気づかないで楽しんでいる場合もある。

親の私が気づいて調整するべきなのだが、
なかなかそううまくはいかないものなのだ・・・。

しかも、今回は大雪の中、来るか来ないかわからない小鳥を
ひたすら探し、待つ、という
「なんの修業やねん!」レベルの旅。

寒さが苦手な私に代わって夫が公園の野鳥観察を買って出てくれて、毎朝ふたりは雪の中を森の公園にむかっていった。

これがよかった。

私だったら、心配すぎて、無理をさせず、いいところでホテルに帰らせたり、カフェで休憩を入れただろう。

でも夫は、もちろん水分補給や休憩はとっていた(はず)けれど、娘が雪の中を果敢に走り周り、いきいきと小鳥や小動物を探し回り、カメラのファインダーをのぞいてシャッターを押しつづけるのに、とても根気よく付き合ってくれた(一日3時間…)。

ほとんど観光もせず、娘が納得いくまでずっと森の中にいた。

娘は、この数年みたこともないような目の輝きで、
私に野鳥や動物の写真を見せて報告してくれた。
雪の中にダイブし、笑う、彼女の表情は神々しいほどかわいかった。

心配することと、エネルギーを信じること。

この二つのバランスをとるのは難しい。

案の定、帰宅後娘は数日、ぐったりつかれて身体のあちこちに不調がでてしまっているのだが、
それでも自分が好きなことを思う存分できたという自信が、
少しずつ、彼女の心と身体を強くしてくれるだろう。

旅は楽しいけれど疲れる。
でもやっぱり楽しいもので、新しい世界をつくってくれる。